こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。
みなさんは名古屋市中区の名古屋テレビ塔(中部電力MIRAI TOWER)足元に「蕉風発祥の地碑」が建立されているのをご存知でしたか?テレビ塔辺りは数えきれないほど訪れているのに、生まれてこの方そんなものがあることに気付きもせず過ごしてきました。《川口屋》さんに足を運んだ際、たまたま目に入ったんですけどね…
和菓子は季節の情景や風物詩などを菓銘とするので俳句と親和性があります。今回は芭蕉俳句と季語となる和菓子を取り合わせてお話ししたいと思います。どうぞお楽しみください。
◇初夏の季語と和菓子 (立夏から芒種の前日まで) ◇仲夏の季語と和菓子 (芒種から小暑の前日まで) ◇晩夏の季語と和菓子 (小暑から立秋の前日まで) ○全ての期間に共通する季語を【三夏(三夏の季語と和菓子)」といいます。 |
【初夏】の季語「麦」にまつわる和菓子『麦手餅』羽二重餅製 小豆つぶ餡
『麦手餅』《御菓子所 芳光》
▪︎販売価格:1個320円(税込)
▪︎賞味期限:当日中
▪︎特定原材料等:大麦、卵
6月初旬、五穀の一つである麦は黄金色に稔り収穫期を迎えます。二十四節気【小満】の末候「麦秋至(5月31日~6月4日頃)」で表されるように、まさしく「麦の秋」なんですね。この時期降る雨を「麦雨」、黄金色に染まった麦畑に吹く爽やかな風を「麦嵐」といいます。
元禄7年(1694)5月、江戸から故郷伊賀上野へ向かう芭蕉が門人たちへ詠んだ留別の句 [芭蕉51才の初夏]です。句が詠まれた情景は川崎(品川説もあり)辺りと云われており、八丁畷駅周辺には句牌が建立されています。
さて、芭蕉俳句を堪能したところで「麦」和菓子を見てみましょう。
芭蕉には頼りなく見えた麦の穂も、農家の方々にとっては風水害のシーズン前に収穫できるありがたい穀物。『麦手餅』は麦の収穫が終わって好んで食べられていたと云われる素朴な和菓子です。
稔りをテーマにした手拭いに、麦の豊穣へ感謝の意を示すために目出度い鶴の銘々皿にご用意いたしました。麦の香ばしいきな粉とふわふわの羽二重餅、中のしっかりとした食感のつぶ餡がしみじみとおいしい一品です。
【仲夏】の季語「紫陽花」にまつわる和菓子『てまり花』道明寺製&村雨 黒糖あん
『てまり花』《御菓子所 芳光》
▪︎販売価格:1個340円(税込)
▪︎賞味期限:当日中
▪︎特定原材料等:なし
『てまり花』とは紫陽花の別称のこと。紫陽花は別称が多く、他にも「七変化」『八仙花』『刺繍花』『四葩の花』と呼び表すこともあります。梅雨のひととき目を楽しませてくれる紫陽花に、それだけ日本人の琴線に触れるものがあったのでしょう。
この離れ座敷の庭は、薮をそのまま眺めとして取り入れた質素な小庭だが、折りから紫陽花の青い花が咲いて、いかにも清閑な趣が深いものだ。 |
これは松尾芭蕉が「後の旅(最後の旅)」に出立する際、子珊(江戸蕉門末期の門人)の別座敷で催された歌仙の発句です。
芭蕉俳句をしみじみ味わったところで「紫陽花」モチーフの和菓子を見てみましょう。
道明寺餅に色とりどりの村雨餡を散らし『紫陽花』の意匠としました。紅碧(色)と淡紅藤(色)が折り混じり、そこに白が足されることで清閑な風情となっています。芭蕉が見た紫陽花もこんな感じだったのかしらと想像してみるのも一興ですね。
最初きんとん製かな?と食べ始めたものの、ほろほろとほどける餡に村雨だなと気付きました。きんとんよりも水分少なめな仕上がりになる村雨をもちっとした道明寺が包み込んでくれています。中のこし餡もあっさりした仕上がりです。
番外編【仲夏】の季語『枇杷』ういろう製 白味噌あん
『枇杷』《御菓子所 芳光》
▪︎販売価格:1個320円(税込)
▪︎賞味期限:当日中
▪︎特定原材料等:小麦粉、大豆
「目には青葉山ほととぎす初鰹」という句を一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。山口素堂は松尾芭蕉と親交が深く、蕉風の確立に寄与した人物と云われています。芭蕉の枇杷を詠んだ句が思いあたらなかったので、素堂の句をご紹介したいと思います。
枇杷は梅雨のころ、大きな葉陰に果実を実らせます。濃緑の葉、たわわに実った藤黄(色)の枇杷、菖蒲(色)の空と美しいコントラストが窺える一句ですね。
本物と見紛うばかりのういろう製『枇杷』は、白味噌の塩気とむっちりとした弾力がいい塩梅の一品です。半分に割ってみると、うっすらと色づいている黄浅緑(色)が白味噌あんの上に仕込まれているのが見てとれました。まだ青みがかっているのがよりリアルさを演出しています。
今回ご紹介した和菓子店舗
《御菓子所 芳光》
住所 | 〒461-0038 愛知県名古屋市東区新出来1-9-1 □市バス基幹2系統、「山口町」又は「徳川園新出来」より徒歩5分 □名鉄瀬戸線「森下」駅·JR「大曽根」駅より 徒歩15分 |
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電話 | 052-931-4432 |
営業時間 | 9:00~17:30 |
休業日 | 日曜日+第3月曜日 ※祝日と第3月曜日が重なる日も定休日とさせていただきます。 ※5月5日営業のため7日(火)は臨時休業します。 |
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