こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。
本日9月9日は、五節句のひとつ【重陽の節句】にあたります。
古来、奇数は縁起の良い陽数、偶数は縁起の悪い陰数と考え、その奇数が連なる日をお祝いしたのが五節句の始まりです。
縁起がよい反面悪いことにも転じやすいという考えから、お祝いとともに厄祓いもする習わしがあります。【上巳の節句(雛祭り)】や【端午の節句】を思い起こすと、イメージしやすいかもしれませんね。
五節句とは
- 1月7日 人日(じんじつ)の節句《七草の節句》
- 3月3日 上巳(じょうみ)の節句《桃の節句》
- 5月5日 端午の節句《菖蒲の節句》
- 7月7日 七夕の節句《笹竹の節句》
- 9月9日 重陽の節句《菊の節句》←今回はここ
【重陽の節句】の風習、食べ物
特に一番大きな陽数「9」が重なる9月9日を、陽が重なると書いて《重陽の節句》とし、不老長寿や繁栄を願う行事をしてきました。
《重陽の節句》の前日に菊花に綿を被せ、翌朝、菊花の香や夜露・朝露を含んだ綿で身を清め不老長寿の祈願をしました。菊は生薬として古から利用されており、【端午の節句】の菖蒲と同様にその季節のものを延命長寿の儀式として取り入れていたと考えられます。が、元々は旧暦の9月9日に行われていた【重陽の節句】、今は菊の季節には少し早いのが難点ですね。
また、菊の花を浮かべた酒やお茶を嗜んだり、菊や栗を使った料理を行事食として食べたりする習わしもあります。食べ物や菊茶、菊酒なら今でも出来そうですよね。
数年前、こんな素敵な和菓子を見つけたことがありますよ。


『掬水』《彩雲堂》※2018年購入
菊の花弁を浮かべて菊酒に見立てた羊羹で、ほんのりとした酒の香りや軽やかな食感に新鮮な驚きを感じた一品です。二層のうち、透明な部分の方がより芳醇な香りがしていました。
以前ご紹介した『ひとくち生ういろう白老』と同じ、常滑市の銘酒「純米吟醸 白老」が使用されています。島根の老舗和菓子屋さんと愛知の銘酒のコラボで出来た見事な和菓子ですね。
他の節句ではどんなことをしていたのか興味のある方は、こちらからご覧になれます。
『掬水』も雅やかで素敵ですが、やはり【重陽の節句】といえば『着せ綿』を意匠とした和菓子でしょう。
『着綿(きせわた)』こなし製《鈴懸》


『着綿』1個400円101kcal 賞味期限1日《鈴懸》
ピンクにほんのりと色づき始めた菊に、ふわふわとした清浄な綿を乗せたさまを表現した一品です。綿に見立てたこなしがたっぷりと乗っているので、華やかな仕上がりになっていますね。

ぽってりとした黒楽茶碗に抹茶を点てて、『着せ綿』をいただきました。露を含んだ綿で身を清める変わりに、食べて身体の中から浄化してしまおうという作戦です(笑)
ひとくちメモ

- こなし製で、むっちりとした食感を堪能できる。
- 中は、紫がかった淡い黒の餡色のこし餡。上品な甘さになっている。
- 角度を変えると、花弁のグラデーションが鮮明となり、綿の見立てのこんもり具合も美しい。

過去に食べた『着せ綿』3選


左から順に
《両口屋是清》こなし製
《和の菓さんのう》練りきり製
《花桔梗》こなし製
見比べてみると花の色も、花いるのが興趣の尽きないところ。
《両口屋是清》さんのは朱色の花びらの片隅に、立体感が出るようにふんわりと乗せられた『着せ綿』の風情を表しています。綿の見立ては、練り薯蕷製。どことなく高貴な佇まいの「菊」の意匠ですね。
《花桔梗》のは艶やか、《和の菓子さんのう》のは下の黄色の餡がうっすらと透けて可憐な印象を受けます。この2点は、和菓子の製法~『こなし』と『練りきり』編でも取り上げています。
『着綿(きせわた)』薯蕷製肉桂餡入り《とらや》


『着綿』1個138kcal
賞味期限2日《とらや》
『着綿』って、練りきり(こなし)製の「菊」に綿を白いきんとんで見立てたものでないの!?と、意外な意匠に驚きを隠せなかった一品です。お月様かなぁと、牧歌的な風情を見出だしていたのがすっ飛んでしまいました。黄色と白のシンプルな薯蕷の色分けで、菊の花と綿を表す…なんて挑戦的な和菓子なんでしょう。そして、さらに驚きなのは餡の味。

羊羹色の餡が、少しボソボソした感じになっているのがお分かりでしょうか。これは、肉桂(ニッキ)が含まれているからなんです。上生菓子を食べて、か、辛い!と感想を抱いたのは初めての経験でした。
肉桂には血行促進したり、胃腸の働きをよくしたりする作用があるので、不老長寿を願う【重陽の節句】にはぴったりの素材かもしれませんね。
今回ご紹介した和菓子店舗、フリーランス和菓子職人
《鈴懸 JR名古屋高島屋店》

住所:名古屋市中村区名駅1-1-4 ジェイアール名古屋タカシマヤ地下1階
電話番号:052-485-4328
営業時間:10:00~20:00
※定休日・営業時間は百貨店の営業に準じます。
《両口屋是清》八事店

住所:愛知県名古屋市天白区八事天道302
地下鉄名城線・鶴舞線「八事」2番出口徒歩3分
営業時間:9:00 〜 18:00(当面の間 9:00~17:00)
喫茶:11:00~16:00(L.O.15:30)
定休日:毎週水曜日
電話番号:052-834-6161
駐車場:6台有り
《和の菓さんのう》フリーランス和菓子職人

定期販売
名古屋星ヶ丘テラス 毎月第2火曜日・第3日曜日
岐阜県本巣市atelierフェリス 毎月第4水曜日
※インスタグラムで予約可
《花桔梗》本店

住所:愛知県名古屋市瑞穂区汐路町1-20
電話番号:052-841-1150
営業時間:10:00~19:00
定休日:元旦のみ休業
※JR名古屋高島屋店、名古屋栄三越店の地下1階にも店舗があります。
《とらや》JR名古屋高島屋店

住所:愛知県名古屋市中村区名駅1-1-4 ジェイアール名古屋タカシマヤ 地下1階 和菓子売場
電話番号:052-566-8546
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