引きちぎってでもおもてなし、ひな祭り和菓子『引千切』

和菓子

こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。

皆さんは、和菓子にどんなイメージをもっていますか?

スナック菓子やチョコレートのような日常的に食べる気軽なオヤツ?

改まった席で出されて、品よく召し上がる必要がある御菓子?

どちらかというと後者のイメージをもたれている人のほうが多そうですね。和菓子に上品なイメージをもっている方からしたら

引きちぎってでもおもてなし

だなんて乱雑で、ちょっとびっくりしてしまいますよね。

今回はそんな面白いエピソードをもつ和菓子をご紹介したいと思います。

ひな祭り和菓子『引千切』の由来

美濃忠《ういろう製》

引千切、これは何と読むか分かりますか?きりこは、どう読むのか分からず和菓子屋の店員さんに聞いてみたことがあります。←こういうことを恥ずかしがらず聞けてしまう性格です。

正解は、『ひちぎり』です。

耳なじみのない言葉ですねー。最初は、その店のオリジナル和菓子かと思っちゃいましたもん。

引千切は、京都のひな祭りで食べる風習がある和菓子です。上巳の節句(※)のころ、宮中では客人がたいそう大勢訪れ、てんやわんやでおもてなしをしていました。当然、人手不足、料理の支度もままならない。そこで、ちぎった餅を丸めずにそのままでお出しすることにしたようです。その慌ただしさたるや…今も昔も3月は行事などが目白押しで忙しないですね。ただそれよりも

よし、そのままの形でいこう!

と、ゴーサインを出した豪気なひとがいたんだなと想像すると、フフッと笑みがこぼれてしまいます。何だか仲良くなれそうな人だなあ。

きれいに丸めることが目的ではない。来客全員に甘いものを召し上がってもらうことが大事なのだ。

なぁ~んてね。

ピンチの時に取捨選択して大事なモノを見失わずに、チャンスに変えていける

いついかなる時も必要な思考ですね。

和菓子の世界も、後世に残るもの、跡形もなく消えていくもの色々あれど、残したいとひとが思うものにはそれなりに面白さを秘めているものです。

※上巳の節句(じょうし/じょうみのせっく)とは、旧暦3月の最初の巳の日ことです。今は桃の節句として3月3日とされていますが、この時期は季節の移り変わりで心身のバランスを崩しやいことから、健康や厄除けの行事をするようになりました。

『引千切』の製法

川口屋《こなし製、道明寺入りきんとん》

ひちぎりは、土台となるヨモギ餅が引きちぎってみえるように端っこがぴょーんと伸びた形になっており、その上に紅白のきんとんが乗っているのが特徴です。

なにか気付かれ方はいませんか?

そうです。蓬の緑、きんとんの桃、白、この配色は菱餅と同じ色合いなんです。

蓬はその香りが邪気を払い、桃は不老長寿や魔除け、白は清浄を表しています。

繊細なきんとんは華やかさが感じられますね。女の子の成長を祝う慶びも表現されている和菓子なのかもしれません。

ただし、細かなきんとんは持ち運ぶと形が崩れやすく乾きやすいもの。要注意です。

川口屋の引千切は、土台が餅製ではなく、こなしで出来ています。そしてきんとんの中には道明寺餅が入っているというサプライズひちぎりでした。よい和菓子に出会うと五感が研ぎ澄まされますね。

同じ菓銘(和菓子の名前)でも、和菓子屋さんごとに意匠が違うのも、和菓子選びの醍醐味のひとつです。

和菓子は出会い

ここまで読んで、引千切を買いに行ってみようかなぁと思われた方、ちょっとおまちください。和菓子屋さんは概ね2週間ごとに商品の入れ替えをおこなっています。特に、引千切のような行事和菓子だと、お店によっては3日間ぐらいしか置いてないこともあります。なので、次出会えるのは来年のひな祭りのころ。そして、同じお店でも同じ意匠で出されるとは限りません。

今ここ、かぎりあるモノ・時を味わい尽くす そんな側面も和菓子にはあると云えるでしょう。

今回紹介した和菓子店舗

川口屋

名古屋市中区錦3-13-12

地下鉄「栄」駅から徒歩約4分

営業時間 9:30~17:30

定休日 日曜日・祝日・第3月曜日

電話番号 052-971-3389(予約可)

美濃忠

愛知県名古屋市中村区名駅1-1-4

JR名古屋高島屋 B2階

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