和菓子の製法~『道明寺製』

和菓子

こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。

和菓子の製法シリーズも、練り菓子(練りきり、こなし、きんとん)蒸し菓子(ういろう、薯蕷饅頭、黄身しぐれ)流し菓子(錦玉)とご紹介してきました。今回は、餅菓子の道明寺製についてお話ししたいと思います。

参考:『生菓子』と『干菓子』、そして『半生菓子』の違いを知ろう

道明寺製の製法と歴史

道明寺粉(どうみょうじこ)とは、水に浸したもち米を蒸したのち乾燥させてから粗めに砕いたもの。砕いた粒の大きさにより全粒・2ツ割れ・3ツ割れ・4ツ割れ・5ツ割れの5種類に分類し、用途に応じて使い分けます。

日本最古の餅菓子といわれる椿餅も道明寺製でした。当時は甘い小豆餡はなく、道明寺餅に甘葛(あまづら:ブドウ科のツル性植物)をかけたものだったようです。

源氏物語「若菜上」より

椿い餅、梨、柑子やうのものども、様々に筥の蓋どもにとりまぜつつあるを、若きひとびと、そぼれとり食ふ

道明寺(粉)は、1400年の歴史を持つ大阪府藤井市にある寺・道明寺の覚寿尼が保存食として作ったことが始まりです。菅原道真公ゆかりの寺で、本尊の国宝十一面観音菩薩像は道真公が手ずから刻んだと史実に残っています。道真公が大宰府に下向される際には伯母の覚寿尼を訪れ、別れを惜しみ歌を詠んだとされています。

春の定番さくら餅

左:『嵐山さ久ら餅』鶴屋寿

右:『さくら餅』《両口屋是清》

『嵐山さ久ら餅』の桜葉は、大島桜の若葉を使っているので香り豊かな桜餅となっています。いつも2個入りパックを買うのですが、それでも開けたときの香りは素晴らしいものがあります。桜の葉をムシャムシャと青虫かのように堪能したい人にはおすすめ!通年商品なので、嵐山のお店ではいつでも購入できるのも嬉しいですね。

参考:桜葉の香りを楽しむ 鶴屋寿(つるやことぶき)『嵐山さ久ら餅』

《両口屋是清》さんのは、むっちりとした道明寺の食感を楽しめるさくら餅となっています。この時期、道明寺製とういろう製のさくら餅が出るのですが、いつも選ぶのは道明寺製。安定の美味しさです。

きんとんの芯になる道明寺

左:『菜種きんとん』《川口屋》

中:『早春』《和の菓さんのう》

右:『井出の里』《川口屋》

きんとんの芯には餡玉が使われることが多いですが、道明寺餅を芯にすることもあります。《川口屋》さんのきんとんは、いつも道明寺ですね。餡×餡のものより餡×餅の方があっさりとした味わいになり、餡とモチモチした道明寺との食感の違いが楽しめるので、私は好きです。

『菜種きんとん』は菜の花畑をイメージした一品です。菜の花は千利休が愛したことでも有名な花ですね。

『早春』は、春の始めごろの咲き分けになっている梅の花を意匠としたもの。

『咲き分け』とは、1本の木に紅白の花が咲くこと。本来、赤い花が咲くのに色素が足りず白いまま花開くようです。平安時代の源平合戦のとき、源氏が白い旗を、平氏が赤い旗を用いていたことから“源平咲き”とも呼ばれています。

『井出の里』は春の終わりに咲く山吹を意匠としたもの。食べた感想はこちらから→おすすめ和菓子『井出の里』《川口屋》

季節の情景を描く道明寺

左:『芽生え』《川口屋》

右:『花筏』《川口屋》

『芽生え』は、黒糖こし餡を道明寺餅でくるみ、さらにそれを羽二重餅で包んだ一品です。羽二重餅にはつくしの焼き印、羽二重餅からうっすらとピンクに透ける道明寺が、春の訪れを表現しています。

水面に散った桜の花びらがまとまって流れ、いかだのようにみえる様子のこと『花筏』といいます。備中餡に刻み桜の塩漬けが入っていて、とにかく餡がおいしい!来年も食べたいと思う和菓子ですね。

左:『黄水仙』《両口屋是清》

右:『柚子餅』《両口屋是清》

道明寺といえばピンクの桜餅が真っ先に思い浮かびますが、黄色も映えますね。

『柚子餅』は、表面の粒々感がちょうど柚子の皮に見える面白味のある意匠となっています。冬至にお風呂に浮かべた柚子はこんな風に艶やかなんでしょうね、きっと。

水仙は葉が枯れた後の球根を植えると毎年花が咲く植物です。春の訪れを知らせる『黄水仙』を、柔らかな道明寺とちょこんと乗っている練り薯蕷で型どった水仙の花で表現しました。

まとめ

道明寺餅は餅製なので、色んな餡との相性がよく気負いなく食べられるのがいいところです。また、先日食べた『ひとくち生ういろう』の土台にも道明寺が使われていて、和菓子の可能性を広げてくれる素材だなぁと感じています。

『ひとくち生ういろう ずんだ』《青柳総本家》

ういろう(米粉)×道明寺(もち米)の二層になっています。

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