和菓子の製法~『きんとん製』編

和菓子

こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。

今回は『練りきり』や『こなし』同様、茶席の花形上生菓子『きんとん製』についてお話ししたいと思います。

きんとん製の製法


◇左:『毬栗』きんとん製つぶ餡入り《花桔梗》
◇右:『焼栗』栗きんとん《花桔梗》

『きんとん』というと、一般的には秋によく出回る栗きんとんを思い浮かべますよね。しかし和菓子の製法では、写真の『毬栗』のようなそぼろ状の餡で成形されたものを『きんとん製』と呼びます。季節の風情を、このそぼろの大小や色彩で表します。そぼろの大小は漉し器やざるの目の大きさによって変わり、それによってきんとんの表情も変わる繊細な和菓子です。

⏫『花籠』のきんとん部分の実演、《三好屋老泉》のインスタグラム

金団篩(きんとんぶるい)でそぼろ状に漉し出した金団餡を、芯となる餡玉などに箸でふわりとつけて成形するので、空気を含んでしっとりと柔らかな仕上がりになります。それ所以、持ち帰りには十分な注意が必要です。和菓子を1,2個で注文した際、簡易で紙袋に入れられる店がありますが、(型崩れ防止のため)お願いして紙箱に入れてもらうこともあります。

春のきんとん

◇左:『花くれない』《万年堂》
◇中:『カーネーション』《鈴懸》
◇右:『すみれ草』《花桔梗》

「蜜璃(みつり)ちゃんみたーい(※)」と、子どもが大喜びした配色の『花くれない』※鬼滅の刃の柱のひとり

柳は緑、花は紅をみごとに表現した、練り薯蕷のきんとん製の一品です。春先の淡い色合いとは異なり、木々も花もそれぞれが生き生きとし調和している情景が描かれています。

母の日に贈るカーネーションは赤が一般的ですが、亡き母を偲ぶ場合は、白い『カーネーション』を贈るそうです。細やかなきんとんが、花びらのくしゅくしゅしたさまを表現した一品です。

夏のきんとん

◇左:『白糸』《巌邑堂》
◇中:『四葩(よひら)の花』《両口屋是清》
◇右:『雲の峰』《美濃忠》

きんとんと白藍色の寒天の数つぶが、流れ落ちる滝と水しぶきを表現している『白糸』。創業明治4年の《巌邑堂》は浜松市にある老舗和菓子屋です。”餡は和菓子の心臓”とうたうだけあって、きんとんも中のつぶ餡もほんとに美味しい。巌邑堂のどら焼きは、映画『あん』の公開記念として劇場内でも限定発売されていたそうです。

『四葩(よひら)の花』とは紫陽花の別名。ピンク、薄紫、水色のきんとんと錦玉の数粒で、雨に濡れる色とりどりの紫陽花を表現しています。

『雲の峰』とは山の峰のようにそそり立っている雲、夏の入道雲のことです。澄みわたる空に白い雲、2色のきんとんで夏の風物詩を表しています。

秋のきんとん

◇左:『錦秋』《鈴懸》
◇中:『萩の花』《和の菓さんのう》

『錦秋』とは、紅葉が錦の織物のように美しい秋のことです。深まる秋の情景を3種類の色彩で表しました。

『萩の花』は秋の七草のひとつ。万葉集にも《萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花》と詠まれています。薯蕷きんとんの芯は道明寺なので、餡玉のものに比べてあっさりとした味わいになります。赤紫の萩の花をほっそりとしたきんとんで表しています。

冬のきんとん

◇左:『初霜』《両口屋是清》
◇中:『若菜野』《美濃忠》
◇右:『木守り』《川口屋》

『初霜』とは冬になって初めて降りた霜のことです。霜に当たり紅、橙、黄色に彩られた葉が花よりも美しく見えるさまを表した一品。上の白い練り薯蕷がいいアクセントとなっています。

『若菜野』とは、春の七草の総称である若菜を摘む野原のことです。大島きんとん(黒糖で作られたきんとん)なので、風味豊かな仕上がりになっています。

『木守り』とは、来年もよく実るようにという祈りをこめて、わざと木に一つ二つ残して おく果実のことです。《川口屋》さんのきんとん製は、芯がすべて道明寺になります。道明寺のモチモチ感と柿の風味がほんのりする餡との調和が素晴らしい一品です。そぼろ餡も濃い橙と薄橙が混じり合っていて、この時季だけの自然の恵みを表しています。

番外編、梅のきんとん

◇左:『梅が香』《両口屋是清》
◇中:『咲き分け』《花桔梗》
◇右:『雪中梅』《川口屋》

『梅が香』は、黒ごまを混ぜたきんとんに紅白に咲き分けた梅の花を練り薯蕷で表した一品です。中国では梅の香りは三千里漂うと云われているそうです。

『咲き分け』とは、1本の木に紅白の花が咲くこと。本来、赤い花が咲くのに色素が足りず白いまま花開くようです。平安時代の源平合戦のとき、源氏が白い旗を、平氏が赤い旗を用いていたことから“源平咲き”とも呼ばれています。

『雪中梅』は、伊勢芋の練り薯蕷きんとん。伊勢芋独特の粘りと濃厚なコクが楽しめる一品になっています。

番外編、小田巻

◇左:『春の川』《川口屋》
◇右:《両口屋是清》名古屋三越10月限定品

通常のきんとん製はそぼろ状のものですが、小田巻という筒状の道具を使ってモンブランのように巻き付けて成形するきんとんもあります。棒状にした練りきりを入れて均等に絞り出すようにするのですが、なかなか難しく綺麗に巻き付けるのに3年ほど要すると云われています。

参考:春の季語と和菓子 ②←こちらに『春の川』を食べた感想を書いてます。

まとめ

華やかなきんとんは、興趣が尽きない製法です。

あのこんもりした形がひとつひとつ箸で作られてると知ったときの感動よ!不器用ものには計り知れない集中力と、柔らかなそぼろ餡を崩さず一瞬で芯につける判断力が必要とされる技法なのでしょう。

そういえば二条城に行った帰りに《虎屋菓寮》に立ち寄って一服しましたが、夫はきんとん製の和菓子を指し、「これなら食べてみたい」と言っていました。(夫は、羊羹で有名な《とらや》だよと言っても「そうなの?」と言うくらい和菓子に疎い人です)

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