こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。
5月20日より二十四節気【小満】に入りました。江戸時代、太玄斎によって書かれた「こよみ便覧(※)」に依れば ※こよみ(暦)便覧は、江戸時代に出版された暦の解説書
【小満】とは、あらゆる生命が天地に満ち始めることを意味します。日ごとに上昇する気温に合わせ、万物の成長が著しい季節の到来です。【小満】の末候「麦秋至」とあるように、麦が成熟し収穫期を迎えるのがこの頃。秋に蒔いた種に黄金色の麦の穂がつき、まさに「麦の秋」といった風情になります。無事実ったことに小さな満足を得られる時期ですね。
【小満】の七十二候 | 名称 | 意味 |
初候 5月20日~5月24日頃 | 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ) | 孵化(ふか)した蚕が桑の葉を食べて、スクスクと成長する頃 |
次候 5月25日~5月29日頃 | 紅花栄(べにばなさかう) | 紅い花が花盛りを迎える頃 |
末候 5月30日~6月4日頃 | 麦秋至(むぎのときいたる) | 初冬に蒔かれた麦が成熟し収穫期を迎える頃 |
今回は【小満】の時期にぴったりな和菓子をご紹介したいと思います。どうぞお楽しみください。
『富貴草』練りきり製 小豆こし餡
『富貴草』《和の菓さんのう》
▪︎賞味期限:製造日より2日間
▪︎原材料名:砂糖、白餡、小豆(北海道産)、山芋、餅粉/食用色素 赤3号、赤106号、黄色4号、黄色5号、青1号
▪︎特定原材料等:山芋
『富貴草』とは牡丹の別名のこと。“花の王”といわれる中国渡来の花で、他に深見草、二十日草、名取草、山橘…etc.多くの呼び名があります。ぼってりと大輪の花を咲かす牡丹の美しさに多くの句が詠まれています。
こちらは与謝蕪村の句。散り落ちた花弁でさえ艶やかで美しい…と、目を奪われたさまが思い浮かぶかのようです。
さて《和の菓さんのう》の『富貴草』は丸みを帯びた三枚の練りきりが重なり合った意匠に見受けられます。いったいどうやって仕上げたのだろうと不思議に思ってお訊ねしたところ、手順はこちら⏬
- 小豆こし餡を白×牡丹色の練りきりで暈し包みする
- 中央に三角棒で凹みをつくる
- 木ベラ?で三枚の花弁に見えるようにスジを入れる
- 花弁の先の部分を少し摘まんで薄く仕上げる
- 細いスジの型をあて花弁に表情をつける
- 三角棒で凹んだ部分に黄色のきんとんをあしらい完成
素人にも分かるように丁寧に説明してくださいました(私が理解できた部分で記載していますので、違うところがあるかもしれません。悪しからず)。こうして職人さんと直接お話し出来るのも《和の菓さんのう》さんの魅力なのです。
中は小豆こし餡。甘さ控えめな味わいです。
『杜若』羽二重餅製 小豆つぶ餡
『杜若』《和の菓さんのう》
▪︎賞味期限:製造日より2日間
▪︎原材料名:砂糖、餅粉、小豆、卵白、白餡、寒天/食用色素 青1号、赤3号、赤106号、黄色4号、黄色5号
▪︎特定原材料等:卵
杜若が愛知県の県花なのはご存じでしょうか。これは、平安時代に成立した日本最古の歌物語と云われる【伊勢物語】にて詠まれた句に由来しています。
在原業平と想定される人物が東国へ流離する「東下り」で、沢のほとりの美しいかきつばたを見て己の心境を歌にしたもの。この句を詠んだ地が、愛知県知立市八橋の辺りになります。その頃から杜若の名勝地であったことがうかがえますね。都に残してきた長年連れ添った妻を思い涙する心情を「かきつばた」の美しさがより一層際立たせています。
羽二重餅で小豆つぶ餡を包み、暈し入れた本紫で『杜若』の意匠としました。真っ直ぐ伸びた透明感ある羊羹が葉の瑞々しさを表しています。
ふわふわの羽二重餅と小豆の粒の食感の違いが絶妙。いくつも食べたくなっちゃう味わいです。
今月の季節の上生菓子セット内容
左上から時計回りに
▪︎『新緑』練りきり製 小豆つぶ餡
▪︎『杜若』羽二重餅製 小豆つぶ餡
▪︎『さくらんぼ』練りきり製 フランボワーズ餡
▪︎『緑さす』錦玉羊羹製
▪︎『富貴草』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『早苗』黒糖きんとん製 道明寺芯
1箱6個入り 2,850円(税込)
今回ご紹介した和菓子職人
フリーランス和菓子職人《和の菓さんのう》
製造者 | フリーランス和菓子職人 三納寛之 |
住 所 | 岐阜県瑞穂市野白新田337-1-102 |
電話番号 | 090-3834-3444 |
定期販売 日·場所 | ◇ 名古屋三越星ヶ丘テラス The Kitchen2階 毎月第2火曜日・第3日曜日 ◇ 岐阜県本巣市atelierフェリス 毎月第4水曜日 ※インスタグラムで予約可 |
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