和菓子の製法~『黄身しぐれ製』

和菓子

こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。

和菓子の製法シリーズも第3弾となりました。

『ういろう製』『こなし』『練りきり製』に続いて、今回は『黄身しぐれ製』についてお話ししたいと思います。

黄身しぐれの製法

《笹屋伊織》

黄身しぐれは、パカッとあいた亀裂が特徴の蒸し菓子です。表面の亀裂が時雨るときの空の様子に似ていることから『黄身しぐれ』と呼ばれています。

参考:『生菓子』と『干菓子』、そして『半生菓子』の違いを知ろう

この亀裂の中から別の色を見せて情景を描く、趣深い和菓子といえます。写真の『桜しぐれ』も、中からピンク色が覗いていて、桜が今にも咲きそうな気配を表現されていますね。

ほろっと口のなかで崩れる食感と、優しい味わいが堪りません。

黄身しぐれの製法

  1. 白餡を加熱して固めに練り上げ、冷ます。
  2. 裏漉ししたゆで卵の卵黄に上新粉を混ぜ合わせる。
  3. 1の白餡とよく混ぜ合わせる。
  4. さらに、卵黄(生)を混ぜ合わせる。
  5. 4を小分けにして掌でのばし、こし餡などの餡玉を包餡し、蒸す。

亀裂のポイントは、固く練られた白餡と卵黄。卵黄の膨張で亀裂が入る仕組みになっています。

それではいくつか『黄身しぐれ製』の和菓子をご紹介いたしましょう。

『下萌』~2月下旬

《川口屋》しぐれ製柚子餡

下萌とは

早春、地中から草の芽が出始めること、またその芽そのもの

下の餡は美しい抹茶色。黒文字をスッと入れたとき、あまりの鮮やかな色合いに心を打たれました。『黄身しぐれ』は、中の餡がどんな色かを見るのも楽しみのひとつです。

大地からのエネルギーを蓄えた芽が、今か今かと春を待ちわびているさまが表現されている一品です。さっぱりとした柚子餡も、爽やかさを感じさせました。

『菜の花』~3月上旬

《花乃舎》

美しい亀裂が入っていますね。亀裂をきれいに入れるのも技術がいるそうですよ。

菜の花は、アブラナ科の花の総称です。緑と黄色のコントラストを見ると、いよいよ春が始まったのだなぁと思います。千利休が好んだことでも知られる花ですね。

参考:利休忌と菜の花の和菓子

『お月さま』~中秋の名月

《仙太郎》

これぞ『黄身しぐれ製』の真骨頂。美しいまんまるな形と黄色の餡が、まさに中秋の名月にふさわしい意匠となっています。中秋の名月のころに販売された和菓子なので、『月うさぎ』を一緒にご用意いたしました。《仙太郎》の和菓子は素朴で手に取りやすいものが多い印象です。

『ひいらぎ』~クリスマス

《三好屋老泉》

クリスマス気分を盛り上げてくれる意匠の一品です。黄身しぐれの亀裂を『ひいらぎ』の口元に見立て、コミカルな表情を演出しました。柊のトゲトゲした葉も、可愛らしい髭に見えてきますね。中は濃厚な抹茶餡でした。

まとめ

『黄身しぐれ製』は、亀裂が入ることそのものをお菓子の表情として楽しむ、遊び心の詰まった製法です。皿に移すときにそっと持ち運ばないと、せっかく職人さんが綺麗に入れた亀裂がぽろっと崩れてしまうのでドキドキしてしまいます。

どことなく懐かしい味わいがするので、好きな製法です。

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