和菓子の製法~薯蕷(じょうよ)饅頭製

和菓子

こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。

私が子どもの頃の給食は、卒業のお祝い行事の際、紅白饅頭が出たと記憶しているのですが、今はケーキ等の洋菓子のようですねー。

大人になると味覚が変わっておいしく感じるようになった物ってありますよね。茄子や冬瓜…そして、薯蕷饅頭もその中のひとつです。子どもの頃に食べた紅白饅頭は、あまりテンションの上がらないオヤツでした。

今回は、和菓子の製法シリーズから『薯蕷製』についてお話ししたいと思います。

『薯蕷饅頭』の製法

茶席の花形の上生菓子である『こなし』や『練りきり製』に比べて、薯蕷饅頭はこの上なくシンプルな和菓子です。それ故に、和菓子職人さん達はこぞって薯蕷製が一番難易度が高いと仰います。

給食の紅白饅頭がいまいちだったのは、乾燥してふっくら感がなくなっていたからかな?

ふっくらした薯蕷饅頭は、薯蕷(芋)の蒸すと膨らむ性質を利用して作られています。饅頭のつなぎに使われる薯蕷芋は、大和芋やつくね芋、伊勢芋などです。

薯蕷饅頭の製法

材料:上用粉、薯蕷芋、上白糖、中の餡

  1. すりおろした薯蕷芋に砂糖を少しずつ混ぜ合わせていく。
  2. 上用粉を混ぜ込み纏まるようにする。  ※粘らせるとふっくら感が出ないので注意。
  3. 小分けにして掌で生地を伸ばし包餡する。
  4. 蒸す。

東海地方だと、三重県多気の特産品である伊勢芋の薯蕷饅頭を見かけることが多いですね。

伊勢芋の特徴
◇栄養価が高く「畑のうなぎ」と称される。
◇味にクセはなく濃厚なコクがある。
◇独特の粘りの強さと、純白のきめ細かな生地に仕上がる性質は山芋の中でも最高品種!

饅頭のルーツは中国

『こなし製』と『薯蕷製』が半々入った《和菓子結》の季節の和菓子セット

饅頭は、室町時代初期に中国から帰化した林浄因(りんじょういん)に由来していると云われています。塩瀬姓を名乗り奈良で居を構え、肉食が禁じられている僧侶のため小豆餡の入った饅頭を売り出したのが始まりです。

林浄因が作る饅頭は、ほのかな甘さが寺院に集う上流階級に大評判となり、後村上天皇に献上されるまでになりました。

塩瀬饅頭で有名な《塩瀬総本家》の始祖にあたる方にもなります。

春の薯蕷饅頭

左:『佐保姫』《川口屋》右:『藤の花』《花桔梗》

うららかな春の情景を彩る薯蕷饅頭を二つご用意いたしました。

『佐保姫』は春を司る女神。甘やかなピンクの薯蕷の皮は、ふっくらもちもちとして中のこし餡との相性も抜群です。ぽつんと描かれた緑は佐保姫が住むとされる佐保山の見立てでしょうか。

こんなに美しいピンクの薯蕷を見たのは初めてでした。

参考:新生活のスタートを祝福する和菓子『佐保姫(さほひめ)』

きらきら光る紫の粉に目を奪われて購入を決めた『藤の花』。風に揺らめく藤を表現した紫の正体は『いら粉』です。

いら粉とは、もち精白米を蒸し上げた後よく乾燥させ、さらに粉砕し少しずつ煎りあげたもの。新引粉・真引粉とも呼ばれる。
参考:藤の花と和菓子

夏の薯蕷饅頭

左:『夏めく』《俵屋吉富》右:『天の川』《仙太郎》

『夏めく』は、金魚すくいを思わせるフォルム。薯蕷の皮が、水色と薄紅色でうっすら色づけされています。薄紅色はすぃーっと泳ぐ金魚の残像を表しているのでしょう。棒つきデザインは珍しくて目を惹きますね!

『天の川』は七夕を見立てた一品です。夜空に輝く美しい天の川に、ぽつんと光る緑の彦星と赤の織姫。薯蕷饅頭は、手で割って食べるのですが、この意匠だと二人を引き裂くようで、半分に割るのはちょっとだけ躊躇してしまいますね。

秋の薯蕷饅頭

 
左:『秋の声』《美濃忠》右:『紅葉溪』《両口屋是清》

『秋の声』は銀杏の葉の焼き印が入った薯蕷饅頭。《美濃忠》の上生菓子は豪華さこそないけれど、どことなく馴染みやすい意匠をしていて好きです。

緑から黄色へ季節が移り変わっていくさまが薯蕷の色合いで表現されています。

『紅葉溪』は名古屋三越限定商品。…コロナの影響で今年はないかもしれませんね。残念です。中が小玉薯蕷入りの凝った意匠をしています。

「鉄火巻きみた~い。」

子どもがそう言ったことから、この風流な和菓子が鉄火巻きにしか見えなくなってしまいました(笑)

冬の薯蕷饅頭

左:『恋文』《花桔梗》 右:『柚子』《両口屋是清》

『恋文(こいぶみ)』はバレンタイン限定商品。四角い薯蕷饅頭にハートのこなし、焼き印で封筒の見立てになっています。可愛らしい恋文は無事に意中の人の元へ届けられたのでしょうか。

見た目そっくりの『柚子』。薯蕷饅頭の生地に柚子が練り込んであるので、仄かに柚子の香りがします。この時期は柚子の見立ての和菓子がたくさん出回るのでどれにしようかと選ぶ楽しさがあります。

まとめ

 

色んな意匠の薯蕷饅頭を見ていただき、いかがでしたでしょうか。シンプルな中にも創造性豊かな薯蕷製の世界が感じられたのではないかと思います。

ショーケースで見るとデザイン性のある華やかな上生菓子に惹かれますが、その和菓子屋さんの美味しさの見極めに、まずは薯蕷饅頭から買い求めても良いかもしれません。

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