こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。
7月3日に20年ぶりに紙幣が全面刷新されました。当日は名古屋の銀行でも長蛇の列だったようですが、既に手にした方はいらっしゃるでしょうか。
わが家はお祝い事を新札でいただいたので、子どもと一緒に3Dホログラフやユニバーサルデザインの見事さを目の当たりにしました。
さて、今回ご紹介するのは「みぞれ羹」。
「みぞれ羹」とは ◇流しものの一種で江戸末期頃に作られた。道明寺羹とも呼ぶ。 ◇錦玉羹に道明寺粉を加えて型に流し込み、冷やし固めた御菓子。見た目の涼しさから夏の和菓子によく使われる製法。 |
近代日本経済の父と呼ばれる渋沢栄一は茶の湯にあまり関心がなかったそうですが、益田克徳らの薦めにより茶室「無心庵」を建てています。明治38年7月、渋沢栄一席主のもと催された茶会では「みぞれ羹」が主菓子として供されたという史実も残っているそうですよ。伊藤博文·徳川慶喜·桂太郎·井上馨…etc. 旧幕府と長州人などの大物を招いた茶会でしたので「みぞれ羹」に両者雪融けの意を込めてふるまわれたのではないのでしょうか。菓銘は茶会(席主)の趣向が表れるところ。その「みぞれ羹」は何と銘されたのか知りたいものですね。
『涼』栗みぞれ羹製 大納言鹿の子
『涼(りょう)』《和の菓さんのう》
▪︎販売価格:1個500円(税込)
▪︎賞味期限:製造日より2日間
▪︎原材料名:砂糖(国内製造)、大納言小豆、道明寺、寒天、栗、小麦粉、餅米/トレハロース
▪︎特定原材料等:小麦粉
『涼(りょう)』と銘された「みぞれ羹」。元々こちらの御菓子の菓銘は『蛍火』といいます。《和の菓さんのう》さんのInstagramに投稿されている作品を見て茶道の先生がご依頼され、茶会に供する際に菓銘を『涼』とされのだとか。『涼』とするか『蛍火』とするかで景色も違ってみえるから不思議なものです。
「和菓子は五感の芸術」と言われます。菓銘の響きをより味わっていただくため、先人達が詠んだ和歌と合わせてお楽しみください。
まずは「涼」。暑いからこそ涼しさを感ずる夏の季語です。詠み手は与謝蕪村。
明け方の涼しさのなか鐘の音が響いている。一つまた一つと鐘をつくたびに次第に遠くへと広がっていくようだ |
透明で美しい錦玉羹が早朝の清涼感を表し、大納言鹿の子と栗で漆黒から夜明けへの空の様子を演出しました。白い粒状のみぞれ(道明寺)は朝露でしょうか。
では『蛍火』とするとどんな景色が見られるでしょうか。こちらの詠み手は三十六歌仙のひとり、紀友則です。
夕暮れになると、蛍より激しく恋心は燃えているというのに…その光が見えていないのか、あの人はつれない |
夕暮れ時に舞い光る蛍。そのさまは漆黒の闇のなかでは朧にしか感じられないことでしょう。美しいみぞれ羹の粒が栗の黄金すら儚げに見せてしまっているのです。
片や煌めく朝日と清涼感、片や漆黒の闇に仄かに映し出される儚げな恋心…同じ意匠でも菓銘が違えば趣も変わったのではないでしょうか。
半分に割ってみると、ふっくらした大納言小豆と栗がしっかり詰まっている様子が見てとれますね。周りの錦玉羹と道明寺粉によるもっちりした食感、瑞々しい歯触りも堪りません💓
今月の季節の上生菓子セット内容
左上から時計回りに
▪︎『清流』練りきり製 小豆つぶ餡
▪︎『宵花火』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『緑陰』本葛製 小豆こし餡
▪︎『朝顔』ういろう製 白餡
▪︎『銀河』ライチマスカット錦玉羹&小豆羊羹製
▪︎『露草』きんとん製 道明寺芯
1箱6個入り 3,200円(税込)
美しい錦玉羹で煌めく夜空を表現した『銀河』。こちらは【七夕】の時期だけ菓銘を『天の川』といいました。
原材料名 | 砂糖、小豆、水飴、マスカット果汁、リキュール、白ワイン、寒天/トレハロース、銀箔、食用色素(赤3号、赤106号、青1号) |
紅掛花色(べにかけはないろ)、白群(びゃくぐん)、瑠璃色…etc.アングルによって表情を変えるのでたくさん撮影してしまいました。
ライチとマスカットの爽やかな錦玉羹に白ワインの隠し味、香りのよい一品に仕上がっています。プリッとした錦玉羹の歯触りも楽しいものですね。
錦玉羹の土台にはあっさりとした甘さの小豆羊羹。
続いて、毎年楽しみにしている『宵花火』。見事な意匠の作り方をご紹介しておきますね✨
- 6色の練りきり餡を組み合わせ、色が混じらないようにして掌で均等にひとつの丸い形にする。
- 6色の餡玉を白餡で半包みにする。
- 均等に潰して表面を白餡、裏面を6色とする。
- (6色側に)餡を入れて包餡。
- 包みぼかしの技法で形を整える。
- 三角形の棒で、円の中心から32本の線を均等に引く。
- 押し棒で線と線の間に、互い違いになるように窪みを入れていく。
- 最後に金箔をかけて完成。
今回ご紹介した和菓子職人
フリーランス和菓子職人《和の菓さんのう》
製造者 | フリーランス和菓子職人 三納寛之 |
住 所 | 岐阜県瑞穂市野白新田337-1-102 |
電話番号 | 090-3834-3444 |
定期販売 日·場所 | ◇ 名古屋三越星ヶ丘テラス The Kitchen2階 毎月第2火曜日・第3日曜日 ◇ 岐阜県本巣市atelierフェリス 毎月第4水曜日 ※インスタグラムで予約可 |
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